かつてエリートビジネスマンだった人がネットワークビジネスを経由してラーメン屋の店員になるという話

ネットワークビジネスに手を染め足を染めていた時期があります。ほんの数ヶ月ですけど。

ネットワークビジネスというのはセールスマンが言葉巧みに見込み客に夢を売り、リクルートし自分の子供として引き込み商圏を拡大していくというビジネスモデルです。

でもって、売る商材もさまざまです。有名なところでは洗剤が筆頭にあがりますが、お風呂の泡装置だったり、健康食品だったり、あるいまもっともっと知られざるネットワーク商材が世の中にはあるでしょう。そんな有象無象のネットワークビジネスの中に成功哲学を売るというものがあります。

今回はエリートビジネスマンがなぜか成功哲学のネットワークビジネスにひっかかってなりたくもない(かどうかは実際には不明ですが)ラーメン屋の店員になるというお話です。

この成功哲学というものがまたネットワークビジネス商材のなかでも実態が無い無形の商品だけに輪をかけて胡散臭い商売ではあります。

その成功哲学の売り方はこうです。まず親となるセールスパーソンは、

  1. 自分の手持ちのアドレス帳(親戚含む)の片っ端からアポ取りスタート
  2. 自分のアドレス帳が全部枯渇したら次は電話帳だったり飛び込み営業だったりだけど大体はここで詰む
  3. アポイントが取れれば見込み客と呼ぶ
  4. 見込み客にどこかの喫茶店でマンツーマンであって売り込む
  5. 売り方は夢を聞いてそれに対して見込み客が確実に実現できるか問う
  6. より確実に実現するためには成功法則のとおりに行動することが近道であると力説する(完璧なカンペあり、ただし暗記すること)
  7. 成功法則を作り出した人は自分が成功した理由を調べ、同様に世界中の成功者の行動原理から抽象化したエッセンスを調べたのだという
  8. これを見込み客は買う
  9. 一度売った見込み客から誰かほかの見込み客を紹介して貰えればかなり売り込みしやすい
  10. ネットワークビジネスマンは買った客の素養を観察してこいつも同じ匂いがすると感じたらリクルート活動(勧誘)をする
  11. 同じ匂いがする見込み客は匂いが同じなので比較的抵抗することなくそのネットワークビジネスの世界に入る

こんな感じで仕事を進めていきます。

まず夢を語らせるのは良いでしょう。誰だって夢は多かれ少なかれありますし、それを聞いてくれれば嬉しいものです。

ちなみにこのネットワークビジネスで成功している人は1000人に1人ぐらいです。成功というのは普通に食えている、生業として生きているという意味です。

残りの999人つまり99.9%は上記手順の2で詰みます。間違いありません。

だって実際に誰でも売れたらかなり高額な商材ですからみんなして大金持ちになりまして経済として成り立ちません。ハイパーインフレにでもなってしまうかもしれません。

そしてどんなにエリートビジネスマンで成功していたとしても、この成功法則の販売で成功できるとは限らないのです。人は誰でも向き不向きというものがあるのです。

エリートビジネスマンで毎週のように飛行機で世界中飛び回って大口の仕事を売ったり買ったりしていたような人がある日、知り合いから紹介されたとかいって成功法則の販売アポイントを取られます。

知り合いの紹介だと断りにくいのでまあ時間の無駄だろうけど「会うだけ会うか」となって万一ツボに嵌ってしまうとその高額な商品が欲しくなってしまいます。これがあればもっと大きな夢の実現へ向けて自分は飛躍できると錯覚します。まあ同じく1000人に1人ぐらいはほんとうに大きな大きな夢を実現できる人もいるかもしれません。

しかし実際にはマスコミでまったく報道されないのをみてもわかるように大きな夢をこれで実現できるかというとそういうもんじゃないです。逆に大きなことを成し遂げるような人はこういうものには頼りません。

欲しくなって買ってしまうだけならまだ数十万円の損失(必ずしも損失だけとは限らず元を取れる場合も多々あるのは事実、ただ元を取ったというのもかなり強引で結局これなしでも実現していた夢なのでは?と思うこともしばしばあり)で済むところ、同じ匂いと判断されるとリクルート攻撃にあって耐えられなくなることもしばしばあるようです。

そして腹立たしいのは自尊心をくすぐられることです。「あなたの力をこの業界で試してみたくはないですか」みたいなことを言われると世界中を飛び回っているようなビジネスマンは「ノー」と言いにくいようです。

(これは大谷翔平選手がメジャーリーグに生きたければまず日本の野球である程度様子を見てからでも遅くなかろうみたいに説得されて日ハムに入ってその後本当にメジャー行ったけど、別の未来として、故障して日本ハムの工場生産ラインで働く悪夢みたいなもん)もちろん日本ハムは最高に美味しいハムですよ。

そしてネットワークビジネスの世界に入ってしまいます。もちろんその会社内ではこれはネットワークビジネスだとは公言しておりません。しかし傍から見れば誰がどう見てもネットワークビジネスなんですよね。

しかし恋は盲目とでもいうように、一度中に入ってしまうとそんなのどうでもよくなります。

売って結果を出しさえすれば誰も文句を言う人はいないし、何しろインチキな洗剤を売っているのではないし、毒にも薬にもならない健康食品を売っているのでもありません。

成功を売っているのです!これを買って成功しないのは商材が悪いのではないのです。商材の指示通りに行動しないからなのです。それにこちらは好意で「成功」を売っていて何が悪い?

ただちょっと値が張るだけ。

そんな言い訳を心の中で思っているかどうかはさておき、エリートビジネスマンだった人でも貧乏学生だったばかりの人でもこの世界に入ったら同様に自分の手持ちの連絡先リストの上から隈なく電話をかけます。

そして会って話して断られ、断られ、ときどき売れてを繰り返します。このときその人がどんな人間関係を今まで築いてきたかがわかります。

人と濃い関係を多く築いてきた人は結構売れるらしいです。逆に人とあまり関わりを持たずに浅い関係ばかり築いてきた人はすぐ挫折するようです。

そしてどんなにエリートビジネスマンだった人でも詰むのです。99.9%は詰む仕組みなのですから。

詰んだらすぐ見切りをつけて転職すればまだ元の道に戻れるかもしれません。しかしネットワークビジネスの世界というのは皆さん妙に人当たりが良くいい感じにみんな前向きでネガティブな人というのがほとんど存在しません。

そういう環境にある程度の期間浸っていると一般のところでネガティブな人とも接するのがすごく苦痛に感じるようになります。

そしてそんな詰んだ元エリートビジネスマンの受け皿となっているのがその同じネットワークビジネス経営者が別事業として運営しているラーメン屋なのです。

ラーメン屋といってもみなネットワークビジネスの経験者ばかり働いているので皆さん超ポジティブシンキングです。あいさつもメチャクチャ気持ち良いです。

こうして元エリートビジネスマンは一旦はネットワークビジネスで一旗揚げてやれと意気込んで乗り込んだものの、最後はラーメン屋の店員になりラーメン屋の暖簾分けなんぞ夢見て今日も皿を洗うのでした。

これは筆者自身の経験ではなく過去に働いたことのある会社で見聞きしたものに少々脚色を織り交ぜて記したものです。

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